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2017年7月14日 (金)

ウォールデン 森の生活 (その3)

 

名作の片隅の鉄道情景(5-3


その1で書いたように買ったのは今泉吉晴訳(小学館)であるが、最終選考!?に残ったのは飯田実訳『森の生活
 (ウォールデン)』(上下)、岩波文庫である。


タイトルがひっくり返っているが、この方が判りやすいという配慮だろう。

こちらには鉄道の写真が幾つかあったし、最初は価格の点からもこれにしようかと思った。訳文も今泉訳と同様にあるいはそれ以上に読みやすい(正直に書けば、読みにくいところが同程度に少ないというべきだろう)。しかしその写真はよく見るとオカシイ。写っているカマが結構大きく、古典機らしくない。写真注記*を見ると1920年撮影とあった。著者ソロウは19世紀の人、ウォールデン池の畔で森の生活を送ったのは1845年から47年だ。


これでは川端康成の雪国(初版
1937年、上越線開通から6年後)の有名な「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった」の参考写真として、デッキ附きの電機ではなくEF64 (上越線へ本格的には79年から)やEH200(上越線へは2009年から)の写真を使うような時代差がある。もっともデッキ附きでも戦後製が多いので要注意だが。

また岩波版に添えられている写真の線路は立派な複線である。本の購入後読んで再確認したが線路は単線である。その単線の描写を今泉訳から引きます。

 

、、、反対方向からやってきた二本の列車は、互いに相手が近づいてくるのに気がつくと、警笛を鳴らし、進路から外れて待機するように警告するのですが、それらの警笛が、時に二つの村を越えて、私の耳に達しました。さあ田舎よ、、、、、

 

(なお、飯田訳では「互いの相手」のことを列車とは解していない、あるいはそう解した上で列車利用者乃至積荷のように訳している-これは私にはおかしな解釈だと思えるが-のでかなり感じが違う。)


アメリカの鉄道創業期ならではのシーンと言える。単線の路線での安全確保はどうやっていたのだろう。

 

電話?それはまだ存在しない。最初にイタリア人アントニオ・メウッチが電話機を試作したのが1854年頃とされる。子供の頃に電話の発明者と間違って**教えられた有名なアレクサンダー・グラハム・ベル(米)の特許が1879年である。

 

電信は?モース(Samuel Finley Breese Morse、米、日本ではふつうモールスと称している)の電信開発は1836年頃、アメリカの連邦政府が電信に取り組むのは1840年代前半からである。コンコードの電信敷設は1851年である。

 

大陸横断鉄道の発展と電信の利用は大雑把に電気通信関係や鉄道関係の書籍に記述されることはある。しかし電信の実用化の最初期の個々の中小の鉄道の電信利用はどうだったのだろうか?電信実用化とともに最優先で整備されたとはちょっと考えられないのであるが、、、

 

どんどん餘談に入ってしまうが、これで思い出したことがある。アメリカではなく、中華人民共和国広西壮族自治区である。

 

96年か97年だったと思うが、東京のAさんと建設型の牽く貨物列車の写真を撮りに行った。踏切番の小屋で通過時刻を探ろうとした。何時来るの?などと訊ねても「不知道=知らん」で片附けられるので、通過時刻の予定表や記録などを見せてもらうのである。タイミングが良い場合には、列車が近隣の駅を発車していれば電話連絡が入っているはずだ。

 

なんとこの踏切小屋には電話が無かった。もちろん電信などほかの通信設備もない。ではどうやって列車の接近を知り遮断機を下すのか?ただひたすら耳が頼りなのであった。更に驚いたのは置いてある列車通過時刻表がダイヤ改正前のものであったことだ。鉄道の最優先事項である安全に関してこの程度のいい加減さ・乱暴さなのである。この国では何が起こっても吃驚してはいけないことを再認識させられた。

 

*:これらの写真は訳者あるいは岩波書店が新たに組み合わせたものではなく、プリンストン大学版「写真附きウォールデン森の生活」にあるH. W. Gleasonグリーソン撮影のものを全て収録したとのことである。鉄道だから鍋屋町の節穴の目でも気が附いてイチャモンをつけたわけだが、他の分野でもウルサ方の目で見るわかる時代差がきっとあるのだろう。

 

**:当時は少なくとも日本ではマチガイとは認識されていなかったのだろう。蒸気機関車の発明者はスティーヴンソンと教えられたのと似ている。ただ電話の場合は国籍が違うので国の面子やイメージ戦略が絡む。

 

ウォールデン 終わり

 

あまらぼ鍋屋町

 

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