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2017年10月 4日 (水)

英文精読術・英文翻訳術・英文読解術

いずれも行方昭夫著 DHC それぞれ201511月、20167月、20171月、

このように立て続けに刊行された。レヴェル(おおむね難度)は刊行順ではなく、「読解術」、「精読術」、「翻訳術」の順に上がると考えてよい。

英文を正確に読むための訓練の本である。翻訳は別とは言えない、真に理解するためには翻訳できる(=自然な日本語になる)くらいにならなければいけないというのが氏のスタンスである。

近年の日本の英語教育の風潮は会話重視に傾こうとしていて、文法よりもとにかく会話が強調され、英語学者や英語実務者にはこれに疑問を呈する方が多い。もちろん読み書き聞き話すという4つがバランスよくできるようにならければいけないが、母語ではなく第二言語、第三言語、、の獲得には文法を理解習得することが缺かせない。会話で発音は重要であるが、母語同然に聞き取り話せるようになることは特別な例外を除いて不可能である。例えば西歐人の高名な日本文学者でも、喋るのを聞くと所謂「外人らしい」日本語から抜けていない方も多々いらっしゃる。しかし決して聞き辛くはない。文法的に正確な日本語であり、語の選択が適切でロジカルな話し方だからである。

もっとも行方氏は従来の英語教育により日本人は「会話はできないが英語を読んで理解することはできる」という世間一般の見解には与されていない。だからこそ真に英語を読めるようになるための諸著作を世に出してこられたのである。私もそれらの著作はいくつか読んで、それこそ「頭をガツン」とやられる点が著作ごとに何箇所かあった。

今回の3著作はこれまでの氏の著作、あるいは他の語学書と異なり、とにかく懇切丁寧に優しく(易しくではない)を旨としている。其の為スペースをたっぷりとった贅沢なレイアウトになっている。また、モームの短編を丸ごと一冊読んでいくことにより飽きさせない。

「読解術」では

本文を小セクションに分け、語釈、イディオム、設問 となっていて、更に

設問に対する正解、質疑応答、訳が記載されている。また(主として若い)学習者用に英語よろず相談室(Q&A)があり、そこには行方氏の若い頃の学習史もかなり詳しく記されている。

「精読術」では

本文を小セクションに分け、さらに12文毎に分け、語釈、試訳、決定訳、解説が記されている。次の「翻訳術」でもそうであるが試訳と決定訳の差には、訳として自然な日本語になっているかどうかだけでなく、そもそもきちんと読めているかどうかを自ら確認するための指摘も多い。

「翻訳術」では

本文をセクションに分けた後、さらに小セクションに分けて

若干の語釈を加えたあと、本文からのアプローチとして解説があり、試訳と翻訳が示される。そして、試訳からのアプローチとして更に解説がある。

翻譯の心得その1、2「暗記用例文集」として合わせて100の文が挙げてあり、その1では各文に実に詳細な解説が、その2には翻訳テクニック毎に数頁の解説がある。

また、ユニークなのは文法解説の詳細や参考例を「英文法解説(改訂第三版)」江川泰一郎 金子書房19916月 に委ねてある、つまり同書の何頁のどこどこを見よとの指示されているところがあることである。これは特に「精読術」に多い。当然(故)江川氏の諒解のもとに行われている訳だが、非常に有効なやり方である。*

繰り返し強調されていることは、少しでも疑問に思ったら「まず辞書を引け」である。それを怠ってエエ加減な推測をしても誤解・誤訳に終わる。

日本の「外国語-日本語」辞書は実によくできている。とくに英和辞書は殆どのものがすばらしいのである。鍋屋町は時々重箱の隅をつついてみせるが、それこそ枝葉末節である。大抵の場合は該当する訳語、それが無くても類似の概念が見つかるのである。

これは日本語が同系統の言語が存在しない孤立言語であることも寄与しているのであろう。丁寧に説明しないと分からない、誤解を招くという事項が多々ある。

数年前にオーストリアの語学学校で短期受講したことがあるが、その時に他国からの受講生が使っていた「露独」「伊独」といった辞書は、まるで単語帳のようなもので、説明が殆どないのに驚いた。逆に言えば、縁戚にあたる言語の話者である彼らにはそれで充分なのであろう。

とにかく文句のつけようがないシリーズであるが、イチャモン大好き鍋屋町としては、どうしても書いておきたいことがある。

それはサブタイトルが「餘りにもアホらしい」ということである。

つまりサブタイトルを附けて並べると

英文読解術 東大名誉教授と名作・モームの「物知り博士」で学ぶ

英文精読術 東大名誉教授と名作・モームの「赤毛」を読む

英文翻訳術 東大名誉教授と名作・モームの「大佐の奥方」を訳す

オオモノ、真に優れた人に肩書きは要らない。英文学者として傑出し、特にモーム研究の大家である行方氏を凡百の東大名誉教授と一緒にすることは、非常に失礼である。東大教授や東大名誉教授だからアリガターイと思うのは軽佻浮薄である。営業政策とはいえ情けない。

注*:この本は1953年初版、64年改訂版発行なので私も高校時代に改訂版を使うてたのかな?と思ったが、どうも記憶に無い。今回購入して念のために行方氏の指示通りに該当箇所を読んで確認したが、よくできた文法解説書である。

説明や例文のあとに書いてある<<参考>>、「解説」が痒いところに手が届くようで、さらにうっかりミスをしないように、注意を喚起していて、「ああそうや、こういうニュアンスや!、用心用心」というのは何点か(具体的に何かは個人的秘密!)あった。活用していこうと思う

あまらぼ鍋屋町

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